思わぬ体験。そして、私達にとっての、更には声を専門職とする上での”私達”にとっての”声”について
どうしてももう一つ記事を書いておきたくて、時間をもらっています。
昨日はもう一つ、本当にびっくりしたことが起こったのです。
私達は音大を卒業しました。その前にも少し音楽の専門学校に通いかけたり音楽教室に通ったり、その前には母親にずっと習っていたり…。
音大卒業後もミュージカルヴォーカルのレッスンに通いました。ここ数か月上咽頭炎が慢性化していてレッスンも通っていないけど…。
その中で、特に大学やそれ以前、つまりクラシックでは、例え誰が出ても、私達の誰が歌っても、先生方にひたすら首を傾げられていました。
”高音が出る声なのになぜ出ないのだろう?””なんか自信がないのよねぇ、もっと自信を持ちなさい”
そして、ソプラノだとかリリコだとか言われていたのに、声楽科では考えられないほど高音が使えなかったり転がすことができなかったり(まぁ私達はそもそも身体に運動失調があるから、それで体幹もなかったり細かい筋肉の使い方も下手だったりはあったのだろうけど)したために、アルトの曲ばかりやるようになっていきました。それでも一度レッスン中に過呼吸のようになって歌えなくなって、”性同一”という問題として先生にカミングアウト。それからは、古典派やバロックに傾倒していたこともあって当時のカストラート(去勢男性歌手、現代ではその人たちが歌っていた曲をカウンターテナーが歌ったりする)が歌っていたような曲をやったりもしました。
…まぁ、実際やってたの殆どが男性だったからね。私達。
ちなみに…歌うのがそもそもが「男性の曲」だったら、普段出ない高音でも出たり、する場合はあったようなのですが。
歌は特にメンタルが出る。その上中の人によって歌い方や身体の使い方違ったりもするし。
しかも、母には、どうも私達の声は(母曰く)「体が小さいからソプラノだけど」「コントラルト(アルトよりも低くて深く男性的な響きの声)のような響きも混ざってる」「ちょっとカストラートっぽいような感じがする(っぽい、というのは、当然ながら現代の人カストラートの声知ってるわけないからね。)」というようなこともいわれていました。
ミュージカルヴォーカルを習ってからは、私のことが多かったけど、それでも、「あなたの声は何故だか何か無理して出してるような感じがするんだよね」と言われたことも。
面白いと思いませんか?
特にミュージカルヴォーカルをはじめてからは、結構私的には解放された感じもあったんですよ。でも何かが、何故だか何なんだかよくわからないんだけど何かが抜け出せてない。技術ではなくてね?技術はまだ全然ぺーぺーですから(汗汗
あの…確かに、身体の使い方の問題だとか言われたらそれまでです。身体なんて人それぞれみんな違うし、詳細正確なところなんて確認しようがないから。
「この身体に合った筋肉の使い方ができてない」という可能性は充分あり得ます。そうでなくても私達は自分の精神体からこの身体の意識上に出てくると、身体の使い方変えなきゃいけないしね。みんな違うからねそれぞれ。精神体とはいえ。
でね、ここからが昨日の話。
私昨日DIDや解離の方達にご一緒させてもらって(ただただ一緒にいたかった、知り合い作ってお話してみたかったってだけの目的だったんだけど)カラオケに行くことになりました。行った時は実はまだよくわからないままに(汗)カラオケとか本当経験ないし、歌うこととか全然考えてなかったし。
でも久しぶりに出たから私とりあえず久々に発声練習したくて(笑)んじゃー折角だから声出しできそうなのーとかって感じでノリでw皆さん知らないだろうからクラシックやミュージカルは入れられないけど(汗←といいながら私皆さんが歌ってた曲何一つ!知らなかったけどね…滝汗
でね、その場、皆さんDIDの人達の上、交代人格さんが出てる場合が大半だったから、私自身の存在がもう何も言わないでも受け入れられてる前提なんですよ。そして皆さん、私達の戸籍の名前なんか知らない。いや寧ろみんな途中で代わりまくって誰が誰だか状態になってるもんだから、私の名前さえ知らない(笑)
だけどね、存在は受け入れられてるわけです。私がしゃべってるから。
もちろん怖い…的な部分もいっぱいありますよ。こういう経験ないもの。本当に信じてもらえてるのか、受け入れてもらえるのか、とか、それだけじゃない普通に皆さんカラオケ慣れてるっぽい雰囲気なのに私物理的にカラオケすら慣れてなかったし!
…でもね。実に不思議な事態が起こりました。
今まで、歌ってる時、レッスンにしても舞台本番にしてもYoutube録るにしても何にしても、何かが抜け切れてなかった。一生懸命この身体に合わせたやり方、この声帯から出てくる声をいかにうまく使うか、そればかり考えてた。それでいて何かいつも何かに引きずられ引っ張られてるような感じがしてた。この身体の名前で呼びかけられたら猶更のこと、何かが揺らいでた。自分の道がわからない。自分の声がわからない。ていうか自分の声じゃないし。でも歌わなきゃならない。私は歌えるはずだ。この身体使ってやってきてるんだから歌えるはずだし上達もするはず!!
…そうやってきた。
だけど昨日、本当に遊びに過ぎなかったのに、それも久々に私表に出てきて、しかも多分身体も暫く歌ってなかったはず……身体が歌うのも私が歌うのも久しぶり、しかも私の歌ったことがないどころか自分の領域外、専門外の曲でもう全てが手探り状態ですよ。
…なのにね?歌ってたら、ほんの一瞬だけですよ。本当短時間だけだったんだけど、何か…今までの人生で何をやってもとれなかったカバーが、はずれたような声が出てた瞬間があったの。
あ、でも座ってたしポップスっぽい専門外の声の出し方(発声法という意味で)してたし、本当発声技術的にはそもそもが問題だらけだったからそこはめちゃめちゃだったわけだけど。
でも、例えそういうの全部、今まで習ってきた技術うまいこと全て詰め込んで歌えたとしても、何をどうしても取り去ることのできなかったたった一枚の薄いけどむっっっちゃくちゃに邪魔なカバーが、一気に消えた瞬間があったの。
紛れもなく私の声。私自身の声で歌ってるような感覚。
あまりにびっくりして自分に何が起こっているのかわからなかった。
びっくりして。
…いや、びっくり。
まぁ…でも…未だに…何あれ?状態だったりもするんだけど。短時間過ぎてあんまり憶えてもいないし。
しかも専門外の初めての曲歌うのに私歌い方とか技術の方に手探りしまくりである意味そっちに必死な時だったし(笑)
でも、多分ね。私が私自身でいた瞬間だったのかもしれない。
そしてあの声だったら、私自由に操れる感じがしてた。
あの声で技術積んでいけば…!っていうのがあった。
これ…ある程度専門的な人でないと共感得られない…!!私達の内情知らないがために伴奏者の子にも今度会った時話しようがないのが悔しい…!
多分ですが、あれは、自分の存在がそのまま、しかも私一人として認められている感覚がカバーを取り除けたのだと思う。
逆に…音楽やカラオケが自分の専門分野とは何の関係もなくて、歌ってる人達は、それぞれの使っている器の声帯の声ではあれ、自分の使ってる声で歌う。ごく自然にしゃべってるのと同じ声なのだろうから、彼らにとっては追究対象でもなんでもないし、自然のままだ。だけど、歌ってる途中で誰か混ざったり、そういうことがあるみたいだった。
私達は専門技術を軸に集中しているから、逆にあまりそういうことはない。いや、専門的にやっている何名かが仮統合みたいな感じになって、っていうことはないわけではないけど。でもいきなり不特定の誰か混ざったり声変わったりすることはない。寧ろ…歌ってる途中で声を変えてはいけない普通(笑)そして歌ってる(本番)途中で意識飛ばしたり引っ込んだり歌っている人を邪魔してはいけない普通(笑)
…というのが専門職の考え方wどんな仕事でもそうよねw
だけど、昨日の体験で初めて気づいた。
…他の人達は(自分や自分達の内情が受け入れられている場面では)歌ってて混ざったり離れたりするけど、私達の場合は…
逆に、今まで〇〇〇〇(戸籍の名前)を背負ってこの身体でこの声帯をうまく使うことを意識してやってきて、それがために常に何か破片だか何だか不純物が混ざってたんじゃないのか?!
自分自身がこの身体を最大限活かそうとしているつもりで、そのつもり自体が邪魔をして気付かないうちに不純物を取り込みまくった状態で歌ってたんじゃないか?!
と。
自信を持ちなさい、どころか…自信を持つための自分がそもそもなかったんです、とすると。
大学後期、在という主人格は、それでもかなり綺麗に歌っていたらしい。彼は結構自分は自分として歌っていたというような感じの情報があるし、カバーがとれかけたことももしかしたらあるのかもしれない。在という名前だけに、自分の存在が「在る」「在ること自体」だったのかもね。
でも…結局この身体からは逃れられた感じではなかった、みたい。
ただ、彼は性自認は男だけど精神体がインターセックスで、いわばカストラートみたいな状態だった…だから、そもそも身体の造り自体が近かった、というだけ。
でも…
だから…
……うー…次が続かない。
こんなの……訓練…できる…もの…?
自分が自分自身として…歌える日なんて…来るの…?あり得るの…?
それか、ただの”ふり”であっても、そんなことできる時が…来るの…?
すごくびっくり。しながら、一瞬パァッと視界が拓けながら…すごく複雑な気持ちになった出来事でした。
「歌うのって、向いてないのかもよ」
母親に、まるっきり素朴に悪気もなにもなく、言われたことがある。
あの人も結構不思議な感覚を持つ人だから、もしかしたら本能的にこの辺のことを無意識が察知して、言ったのかもしれない。
聖